こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ13
『しりとりのだいすきなおうさま』 鈴木出版

(月刊「こどもの本」2019年12月号より)
『しりとりのだいすきなおうさま』

支持され続けて20年
『しりとりのだいすきなおうさま』
中村翔子 作/はたこうしろう 絵
2001年6月刊行

 この絵本は元々、月刊絵本「こどものくに」の2001年3月号として発表されたものです。なので、この作品の制作にかかわっていたのは2000年ごろということになります。今から20年近く前のことなので、記憶はほとんど飛んでしまっていますが、たしか、作者の中村翔子さんと別の作品の打合せをしていたとき、中村さんから「食べ物のしりとり絵本を作りたい」というような話が出ました。そのとき、食べ物の名前を単にしりとりで羅列していくだけではなく、ストーリーの中で、自然な形で食べ物のしりとりが出てくるといいですね、というようなことを話したと記憶しています。そして、提案されたのがこの作品でした。しりとりに関していえば、食事の最初が「サンドイッチ」というのはごく自然。次の「ちくわ」は地味ではあるけれど、練り物好きの私にとってみればこれもOK…。私の中にはすんなりと入ってきたストーリーでした。会議では幼児には難しいのではないかという意見も出ましたが、しりとりができる年代であれば問題はないということで進行することになりました。

 さて、ストーリーは決まったものの、問題は絵です。出だしには「おうさまは なんでも しりとりに ならんでいないと、きが すみません」とあるものの、しりとりの順番に並んでいるモノが指定されているわけではありません。だけど、画家さんはその状況を描かなければなりません。編集者もいろいろと考え、しりとりの一覧を作って、提案しました。何をどのように提案したかは忘れてしまいましたが、いろいろと考えた記憶だけは残っています。最終的には、はたこうしろうさんがしりとりに並んでいるモノをみごとに選び、描いてくださいました。

 すると、この絵本が刊行されて間もないころ、読者から電話がありました。声からして、小学生の女の子のようです。最初のページのしりとりがどうしてもわからないというのです。電話口で、最初から一つずつ言ってもらいました。おうさま→まど→ドア→アルバム…と続き、マント→時計→椅子、その後の絵は、金魚の入った水槽で、水槽→植木鉢と続くのですが、女の子はどうしても「金魚」に目がいき、しりとりが止まってしまうというのです。説明するとようやく納得して、明るい声で電話を切ってくれました。

 今から思えば、こんな反応があったのが、長く売れ続ける予兆だったのかもしれません。

 その3年後には大型絵本も刊行し、読み聞かせ会の定番として定着しているようです。うれしいことです。

(鈴木出版 波賀 稔)