こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ10
あかね書房

(月刊「こどもの本」2019年7月号より)

多くの方々が応援し、育ててくれた絵本

ザ・キャビンカンパニー 作・絵
2017年4月刊行

 横浜の青葉区に、寺家スタジオという素敵なギャラリーがあります。こちらのスタッフの坂上浩美さんから、2013年の暮れに、「とっても素敵な作家さんがいるのでぜひ!」と、猛烈なプッシュでご紹介いただいたのが、阿部健太朗さんと吉岡紗希さんのザ・キャビンカンパニーでした。

 ちょうど、『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版)が刊行され、注目を集め始めていたところ。その後、大阪で原画展の設営を手伝ったり、大分の廃校を利用したアトリエにお邪魔したりする機会があり、企画のやりとりを始めました。様々な提案や要望を投げかけましたが、ふたりはいつも、期待を上回るものを返してくれました。あるとき、やりとりしていた企画とは、まったくちがう企画をくださったのが、『しんごうきピコリ』でした。奇想天外な展開が楽しく、交通ルールが学べそうで学べないというところが面白く、進めていただくことになりました。

 企画はすんなり通ったものの、「信号の色の解釈はどうするのか」、「信号で遊んでいいのか」などなど、子どもたちに読んでもらう絵本だけに、社内では様々な指摘がありました。その都度、キャビンさんと、頭を悩ませながら内容をブラッシュアップしていきました。そんな中、ブックデザインをお願いしたのが、小野明さんです。装丁家であり、編集者の大先輩である小野さんが、ラフを見て、とても面白がってくださいました。そのことで大いに勇気づけられ、2017年4月に、『しんごうきピコリ』を刊行することができました。

 キャビンさんは、刊行のたびに、プロモーション動画を作り、原画展を行なっていました。『しんごうきピコリ』では何もしませんでしたが、それまでの既刊での展開が作用し、多くの書店さんが応援してくださり、順調に売り上げを伸ばしました。大きかったのが、大手書店チェーンが行なった絵本賞のフェア展開でした。このとき動いてくれたのが、刊行前に厳しい指摘をしていた営業の人物でした。その後、日本絵本賞読者賞に選ばれ、さらなる販売展開の機会を得られたことにもつながったと思っています。

 キャビンさんの読み聞かせイベントでは、今や鉄板になっている『しんごうきピコリ』。あるサイン会で、文字が読めない3歳くらいのお子さんが、親御さんの読み聞かせで記憶し、内容を0歳児に語って聞かせているのを見ることができ、とても感激しました。こうした結果が得られたのは、キャビンさんの力と、多くの方々がキャビンさんと絵本を応援してくださったからと、心底実感しています。

(あかね書房 榎一憲)