日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『謎解きカフェの事件レシピ ゆめぐるま』 田村理江

(月刊「こどもの本」2019年4月号より)
田村理江さん

アットホームな謎解き物語

 カフェでゆっくり過ごす時間が好き。ミステリーを読むのが好き。そんな私なので、この二つの要素がギュッと詰まった物語を書きたいな、と以前から思っていました。

 ある日の午後、近所にあるピンク色の壁の洋館風カフェでお茶を飲んでいたら、ドア口で「ただいまー」と可愛らしい声。ランドセルを背負った小さな女の子が、カウンターに飛び込んで行きました。それを見た瞬間、“おうちカフェ”の構想が鮮やかに動き出しました。

 主人公は小学生の詩織ちゃん。両親がカフェ〈ゆめぐるま〉を営んでいるので、お料理が得意。友情にあつく少しせっかちな、どこにでもいる女の子。まわりで起きるささやかな事件を、カフェにまつわるヒントを頼りに、迷いながら解決していくストーリー。ヒントはなぜか、いつもファンタスティックな形で、詩織ちゃんに届けられます。このヒントをあれこれ考える時間が楽しくて。

『ゆめぐるま』はミステリーとも、ファンタジーとも言えるけれど、物語の軸は「毎日の温かな暮らし」の描写。家族や友だち、町の人たちに支えられ、元気な日々を過ごす詩織ちゃんに、私自身も大いに励まされました。明るい気分の時は、この物語でもっとウキウキできるし、悲しい時はパワーをチャージしてくれるはず。

 表紙や各場面を飾るpon─marshさんの優しい絵が、登場人物に息吹と輝きを与えてくれたのも嬉しいです。

 登場人物は、ほぼ私のファミリーがモデルで、本の冒頭に記された誕生日も、その人たちと同じ。ちなみに、私はせっかちだから、詩織ちゃんに似ているかな?

 ソフトカバーで気軽に手に取って頂けるサイズの本なので、誰かの“親しい友だち”みたいになってくれたらいいな、と願っています。三巻それぞれ違う“味”がありますので、是非カフェ『ゆめぐるま』で詩織ちゃんと一緒に楽しんでください!

(たむら・りえ)●既刊に『リトル・ダンサー』『夜の学校』『コスモス・マジック』など。

『謎解きカフェの事件レシピ
国土社
『謎解きカフェの事件レシピ ゆめぐるま』(全3巻)
田村理江・作
pon−marsh・絵
本体各900円