日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

『もぐらのいえ』 松屋真由子

(月刊「こどもの本」2019年3月号より)
松屋真由子さん

土のなかにはひみつがいっぱい!

『もぐらのいえ』は、もぐらの一家が住む家を一部屋ずつたどりながら、探し絵をする絵本です。

 このお話は、一枚の大きな家の絵を描くイメージで作り上げました。また、すこし離れて眺めても、近づいてじっくり見ても、どちらでも楽しめるものを作りたいと思っていました。

 まずは、一目でパッとその部屋の魅力が伝わるように、それぞれの部屋がなにをする部屋なのか決め、さらに地面の下の家として、植物や根っこ、化石や骨などを生かしたアイデアを考えました。地中の部屋ということで、色が似ないよう、部屋ごとにテーマカラーを決めています。

 また、じっくり見ても楽しめるように、もぐらの家族の暮らしや、それぞれの性格を考えながら、小物を描いていきました。同じ部屋が話のなかで何回か出てくるのですが、時間が進むことで少しずつ様子が変わっています。そうした細かい部分に気づいてもらうのも、この絵本の楽しみのひとつかなと思っています。

 植物を描くことが私はとても好きなので、主人公の趣味に重ね合わせ、絵のなかでたくさんの植物を描きました。私は割と下描きに忠実に着彩するタイプなのですが、植物に関しては描いていると止まらなくなり、下描きにないところにもワサワサ生やしてしまいます。ただ、ガツガツ描き足すだけでなく、探し絵をするために、部屋に目線が行くよう気をつけました。見やすさという点では、部屋のなかにあるものを判別しやすくするため、輪郭線のある絵で描き進めました。今までは輪郭線をつけない描き方が主だったので、私にとっては挑戦でした。

 制作中は試行錯誤の積み重ねでしたが、改めて絵を描く楽しさを感じることが出来ました。関わった全ての方に心の底からお礼申し上げます。そして、たくさんの読者の方に楽しんでもらえますように! どうぞよろしくお願いいたします。

(まつや・まゆこ)●本書が初の著作。

『もぐらのいえ』"
くもん出版
『もぐらのいえ』
松屋真由子・作
本体1,400円