日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『らくがきボール』(鈴木のりたけ)

(月刊「こどもの本」2019年2月号より)
鈴木のりたけさん

ラグビーボールがやってきた

 わたしの家にはテニスボールがたくさんあります。サッカーボールも3つくらいありますね。子どもとキャッチボールをしようとグローブと一緒に買いそろえたゴムボールと軟球もあります。卓球の球は10個くらい。8ヶ月前そこにラグビーボールが仲間入りしました。するとこの新入りボールが子どもたちに大人気。わが家でキャッチボールやろうと言えば、それはすなわちラグビーボール。家の中で投げればあっちこっちへ転がってドカンドカンとうるさいですが、なんだかみんな笑顔になる。ラグビーボールには不思議な力があります。
 楕円球って変な形ですよね。それに比べて、わが家に先住していた他のボールは、大小あれど、みんなツルッと均整のとれたお顔立ちのイケメンボール。後から来たへんてこボールが人気者になって、諸先輩がたは憤懣やるかたなしといったところでしょう。まあ世の中そんなもの。だから面白い。
 ボールにはメーカーのロゴやかっこいい模様がついています。それがなくなって、真っ白になったらどうだろう。この楕円球がさらに面白く見えそうだ。なんだか意地悪ですが、ボールを真っ白に塗ることにしました。それを見た子どもたちがまた大盛り上がり。楕円球のキャンバスにらくがきを始めました。せっかくわたしが白く塗ったのに。
 この楕円の形にはやはり何か特別な力がある。そんな思いからこの『らくがきボール』を作りました。だから開けば本も楕円形。2冊買って並べていただければ、開かずとも楕円形! 「なにこれ」「変なの!」という驚きや笑いを入り口にして、普段と違うものをもっと知りたい、見てみたい、触ってみたいという好奇心が育つことを願っています。その中の何人かがラグビーやってみたい!そう思ってくれたらうれしいです。

(すずき・のりたけ)●既刊に『おしりをしりたい』『カ どこいった?』『ぼくとばく』など。

『らくがきボール』本体1,300円
小学館
『らくがきボール』
鈴木のりたけとラグビー選手の仲間たち・さく
本体1,300円