日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『つっきーとカーコのけんか』(おくはらゆめ)

(月刊「こどもの本」2019年2月号より)
おくはらゆめさん

ひゃっかいけんかしてもひゃっかいなかなおり

『つっきーとカーコのけんか』は、猫のつっきーと、からすのカーコが色んなけんかをするお話です。
 作り話だけど、本当にあった事もたくさん混ざっています。
 つっきーのモデルは、私と暮らしていた同じ名前の茶色い猫です。お話に出てくるのと同じようにお腹の毛が少ない、可愛い奴です。
(他にも可愛いとこがいっぱいある)
 私は、つっきーとからすのカーコが友達になって遊んでいる絵を何枚も描いて、展覧会で飾りました。
 その絵を私と同じくらい気に入ってくれた編集者さんが「絵本にしましょ」と言ってくれて、あーでもないこーでもないと作っていたら、童話になってしまって「じゃ、童話にしましょ」となったのでした! 嬉しかったです。
 お話を読み返してみると、今までに体感した事が、たくさん詰まっていました。
 私が小さい頃、いとこ達が毎日のように兄弟げんかしているのが、少しうらやましかった事。
 大人になって学童保育で臨時職員をしていた頃、一年生の子とけんかして「一生許さない」と言われた次の日に(このセリフはお話にも出てきます)ドキドキしていたら、その子がはじける笑顔で「先生あそぼ〜」と走ってきた事。その時、仲直りが出来るってすごくいいなあと思った事。
 そして何より強く思い出したのは、同じ学童で「ごめんね」「いいよ」のやりとりがあれば、何をしてもいいと思っていそうな子がいて、もやもやした事。
“心からの「ごめんね」じゃないなら、形だけであやまるんじゃねえよ”と胸ぐらをつかみそうになったけど、「ごめんね」は確かに大事な言葉でもあるから、そのもやもやをどうやってその子に伝えたらいいのか分からなくて、結局何も言えませんでした。
 まだその答えは出ていないけれど、つっきーとカーコのお話は、続いていく予定なので、しばらく考え続けてみたいです。

(おくはらゆめ)●既刊に『シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる』『わたしといろんなねこ』など。

『つっきーとカーコのけんか』本体1,200円
佼成出版社
『つっきーとカーコのけんか』
おくはらゆめ・作
本体1,200円