こどもの本

私の新刊
「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」 田内志文

(月刊「こどもの本」2019年1月号より)
田内志文さん

子供の頃の自分と再会できる冒険ファンタジー

 早くに父親を亡くした双子、アレックスとコナーは、ある日、おばあちゃんからもらった物語の本『ランド・オブ・ストーリーズ』の中に吸いこまれ、おとぎ話の登場人物たちが暮らす「めでたしめでたしの後の世界」に迷い込んでしまう。双子は元の世界に戻るため、物語の登場人物たちと一緒に願いをかなえる呪文を探す冒険をすることになる……。

 ほとんどすべての人々がいちばん最初に触れるエンターテインメントは、物語なのではないだろうか。テレビやゲームなどよりも早く、両親から「むかしむかし……」と昔話やおとぎ話を聞かされて育ったという人は、とても多いと思う。

 大人になると読書や物語を積極的に楽しむ人はどんどん減っていってしまうが、それでも童話やおとぎ話をモチーフとしたテーマパークは大好きだったり、「児童文学」というキーワードは気になったりするものだ。

 この「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」シリーズは、そうして心に住み着いたまま、ある意味では生き別れ・・・・になってしまっている、赤ずきんや白雪姫といった主人公たちとの同窓会のようなファンタジー小説だと思う。たとえば今、なつかしい同窓生たちと集まったりすると、「え、あいつ医者になったの?」だとか、「あちゃあ、離婚二回とは、またいろいろ苦労したな……」だとか、さまざまな驚きが見つかるわけだが、この物語の登場人物たちとの語らい・・・・も、まさにそんな感じである。いろいろな経験をして大人になった僕たちは、やはりいろいろな経験をして成長してきた彼らと再会し、一緒に冒険をすることができるのだ。

 その冒険を通して、ふと「ああ、僕には子供の頃と変わることのない想像力が今でもあるのだ」と気付かされる。自由に、そしてひたむきにおとぎ話の世界を旅する双子にいざなわれ、気付ば、自分を羽ばたかせていなかったのは自分だったのだと感じている。

 児童文学とはいえ、そうして大人に対しても扉を開けて待っていてくれるような温かさが、このシリーズの最大の魅力だと思っている。

(たうち・しもん)●既訳書にA・ロビラ『Good Luck』、J・コナリー『失われたものたちの本』など。

『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』(全6巻・既刊2巻)『1願いをかなえる呪文』本体1,800円『2帰ってきた悪の魔女』本体1,900円"
平凡社
「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」(全6巻・既刊2巻)
クリス・コルファー・著
田内志文・訳
『1願いをかなえる呪文』本体1,800円
『2帰ってきた悪の魔女』本体1,900円