日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ5
「おしりたんてい」シリーズ ポプラ社

(月刊「こどもの本」2018年9月号より)
「おしりたんてい」シリーズ

見た目以上に面白い!
「おしりたんてい」シリーズ
トロル さく・え
2012年10月~刊行

「おしりたんてい」シリーズは、2012年10月にスタートしました。現在までに、絵本6冊、読み物が7冊の計13冊が刊行され、累計部数も300万部を突破する、人気シリーズに成長しました。

 本当に、びっくりするくらいのスピードで、多くの子どもたちに親しまれている「おしりたんてい」シリーズですが、そのデビューまでの道のりは、決してスムーズではなく、むしろ難産だったと思います。

 著者のトロル先生とお会いしたのは、2011年冬のことだったと思います。お会いするきっかけは、もちろん「おしりたんてい」でした。すでにおしりたんていは、アプリとして世に出ていて、多くの子どもたちに親しまれていました。そのおしりたんていの魅力にひかれた私と同僚は、おしりたんていを書籍化しようと、先生にお会いしたのです。

 アプリでも、音とお話を楽しむ作りになっていたことや、キャラクターデザインがとてもしっかりしていたこともあり、絵本にすることはとても親和性が高いと、私もトロル先生も思っていたと思います。

 しかし、絵本にするという作業は、絵本を作るのが初めてだったトロル先生にとって、とても大きな挑戦だったということがわかりました。ただ、おしりたんていというキャラクターの魅力だけで読ませる絵本ではなく、絵本として魅力的な作品にするために、どういう内容の本がいいのか。そのための話し合いが、幾月も続きました。

 そして、結果生まれたのが、見た目はおしりでも、紳士的な振る舞いに、丁寧な話し方、そしてレディにも優しいというキャラクターと、幼児向けでありながらも本格的な推理小説の面白さを楽しめるミステリ絵本。それが、見つけだした答えでした。

 おしりたんていの最大の武器は、やはりその見た目のインパクトと、親しみやすさだと思います。しかし、本当の魅力は、本として面白いことだと思っています。本を読むきっかけというのは、読者一人一人によって違うと思います。でも、おしりたんていの読者の皆さんには、おしりたんていを通じて、本を読む面白さ、ミステリ小説の面白さ、わからなかったことを知る面白さを体験してもらえたらと思って編集しています。そういう意味で、先日ミステリとして評価されて、「ミステリマガジン」の表紙を飾り、特集を組んで頂けたことは、ミステリ作品としての質にもこだわって作っているトロル先生にとっても、とても嬉しい出来事でした。おしりたんていの面白さへの探求は、これからもププッと続きます。

(ポプラ社 髙林淳一)