日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ドキドキ! おばけのにゅうがくしき』 大木あきこ

(月刊「こどもの本」2018年8月号より)
大木あきこさん

成長のよろこび

 この春、私の二冊目の絵本となる『ドキドキ! おばけのにゅうがくしき』が出版されました。以前から妖怪や民話に興味があったので、実際に絵本になる事が決まった時は、小躍りして喜びました。

 この絵本は自分の実体験に着想を得てつくっています。と言っても、おばけが見える訳ではないし、入学式が嫌で泣きわめいたという記憶もありません。私は大学卒業後、「図工が好き」という理由で小学校の教師となり、絵本作家となった今でも、毎日子ども達と図工の授業を楽しんでいます。

 子ども達は可愛くて愉快で、突然思いがけない事をしたり、ハッと気づかされたり、そして時には厄介な事もあります。その日々の中で見た事、聞いた事を記憶の中から少しずつ引っ張り出してきて、絵本にしました。

 教師として子ども達と向き合っていて嬉しい事は、「その子が今までできなかった事が、できるようになる」事です。それを絵本の中で描こうと思いました。

 今回は「入学式」がテーマで、主人公のおばけ『ぺろ』を、「おばけなのに怖がりで、おばけが嫌い」という設定にしました。ぺろが話の中で、怖くて苦手だった同級生の友だちの事をいつの間にか好きになる、という成長ストーリーにしたのです。他にも、おせっかい焼きのろくちゃん、お調子者のかんたろう、面倒見の良いクロ君など、今までに出会った子ども達をモデルにしたおばけたちが、少しずつ成長していく、そんな物語になっています。

 また、教室などもこだわって描いているので、大人の方にも細部まで見てもらって、自身の小学校時代を思い出すきっかけにしていただけたら嬉しいです。

 今はおばけシリーズの次回作を描いています。おばけモノではあるけれど、夏のおばけシーズンに関係なく、人間の子どもの日常にも置き換えられるような「おばけ達の日常」を意識しています。おばけの子ども達の成長をぜひ読んでいただきたいです。

(おおき・あきこ)●既刊に『うんどうかいがなんだ!』(きむらゆういち/さく)。

『ドキドキ! おばけのにゅうがくしき』"
新日本出版社
『ドキドキ! おばけのにゅうがくしき』
大木あきこ・ぶん・え
本体1、300円