日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『空飛ぶのらネコ探険隊 動物園をからにしろ!』 大原興三郎

(月刊「こどもの本」2018年7月号より)
大原興三郎さん

のら号 戦火の動物園へ

 風船で離陸。宙に浮いたら、バッとパラグライダーを開き、風をもらって翼をひねり自由自在に飛べる。二つの組み合わせは、理屈の上ではほんとうに空を飛べそうです。だけどクルーはネコたちだって でもそこはファンタジーの特権、目をつぶっていただいています。

 連作もはや五巻目、ネコたちは、とつぜんやってきた、怪しい老船長に誘い出されます。船はまるで幽霊船。なぜかブリッジには動物のぬいぐるみがいっぱい。

 やがて明かされるのは、動物園ひとつを丸ごと空っぽにすること。そこに待っていたのは、獣医でもある聖女、ファティマ。老船長のもつ使命と共鳴する。

 "戦争なんかする国に動物園はいらない!"

 その使命に深く関わっていたぬいぐるみたち。伏線いっぱいの物語に仕上がりました。

 のらネコたちは疑似ファミリーですが、血縁を越えた信頼でつながっています。もと図書館の賢者館長。のら号のキャプテンは、どんなピンチにも冷静沈着なクック。二ひきをとりまく五ひきのクルーたち。その行く先ざきには、いつも奇跡としか思えない出会いが待っていて。

 一巻目ではガラパゴスのゾウガメ、ひとりぼっちのジョージの子孫が。二巻目では象牙の密猟者と戦う母ゾウが。三巻目では密猟されて日本に売られたベンガルヤマネコの兄妹を、ふるさとインドの森まで連れ帰る旅で。四巻目の舞台はエジプト。王妃の墓を三千年も守り続けてきた神のネコ、バステト。いつも世界のどこかが舞台です。そしてこの五作目。

 いつもいつも拘るのは、ネコたちを困らせること。そんなこんなのエピソードが生まれたときの嬉しさといったら。われながら性格の悪さにあきれています。それ、わが家の黒ネコにうつってしまい、彼女もけっこう、ワルです。

(おおはら・こうざぶろう)●既刊に『海からきたイワン』『なぞのイースター島』『マンモスの夏』など。

『空飛ぶのらネコ探険隊
文溪堂
『空飛ぶのらネコ探険隊 動物園をからにしろ!』
大原興三郎・作
こぐれけんじろう・絵
本体1、300円