こどもの本

私の新刊
『ママが10にん!?』 天野 慶

(月刊「こどもの本」2018年7月号より)
天野 慶さん

ずっとずっと見ていたい

「あら、この子寝てるわ!」

 助産師さんの声とともに、生まれてきたムスメ。「赤ちゃんも苦しいの。お母さんだけがつらいんじゃないのよ!」と叱咤されながら陣痛を過ごしたのに。ドラマのイメージ(赤子「おぎゃあ! おぎゃあ!」先生「元気なお子さんですよ!」)とは、まったく違う!

 目を閉じたまま、がうがうとおっぱいに食いついて飲みだす。おお、すごい力! 誰に教わったわけでもないのに、上手! そのうちまたぐっすりと眠ってしまって。30分ぐらいあとに、ふと横に寝かされているムスメを見たらそっと目を開けていたので、そこで「はじめまして。よろしくね」のご挨拶をしたのだった。

 確かに、助産院の畳の上で産むという変わった選択をしたのは私だけれど、ムスメの行動まで変わっているとは……と脱力から始まった子育ては、その後も「え、予想と違うぞ!」の連続で。

 その後、ムスコをふたり産んだときも「一度やってるから、もう流れはばっちりさ」なんて油断を見抜いたかのように、また違っていて。まだ頭しか出ていないのに「へうう」と声をあげ「わ、もうしゃべってる!」と助産師さんたちを大爆笑させながら生まれた子などもいた(将来お笑い芸人になったら「君は生まれる途中でもう人を笑わせていた」というと決めている)。

 義父を自宅介護しながら、3人を育てていた時期もあった。でも、なるべくたくさん、一緒に過ごした。手をかけててえらい、ではなく、ただの強欲。想像をやすやすと超えて、何が起こるかわからない子たちとの毎日。目をそらしたらもったいない!

「10人に分身できたら、家事も仕事もできるし、全力で遊ぶ体力だって!」と、あの、いつも大騒ぎだった日々に何度も願ったことが『ママが10にん!?』になりました。『だめだめママだめ!』『やだやだパパやだ!』に続くシリーズとしてたくさん笑ってもらえたらうれしいです(とはいえ、保護者会や行事に駆け回る今も、5人ぐらいには、なりたいです)。

(あまの・けい)●既刊に『だめだめママだめ!』『やだやだパパやだ!』、歌集『つぎの物語がはじまるまで』など。

『ママが10にん!?』"
ほるぷ出版
『ママが10にん!?』
天野 慶・文
はまのゆか・絵
本体1、300円