日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『たったひとつの君との約束~失恋修学旅行~』 みずのまい

(月刊「こどもの本」2018年6月号より)
みずのまいさん

小学生版韓流ドラマ

 児童書のヒロインは明るければいいってもんじゃない。流行にのれば売れるってもんでもない。

「たったひとつの君との約束」、略して「君約シリーズ」は私のそんな小さな二つの反骨精神から生まれました。

 小説界は、けっこうひねたりすねたりしているヒロインが多いのですが、最近の児童書は明るい女の子が主流です。たしかにあんまりうじうじしていると、読者はいらっときますしね。

 でも、子供のころ、みんな、そんなにも明るく健康的でさわやかでしたか? 子供って子供だからこそ、自虐的な部分もあったりしませんでしたか? 私の中のそんな想いもあり、主人公の前田未来が誕生しました。

 未来の初恋の相手ひかりは同じ学校ではなく、はなれた町に住んでいるので、お互いのやりとりは大体が手紙、文通です。

 これは私の中でちょっとした博打でした。メールを超えてラインが主流になりつつある時代に、文通が「ふる~い」ととられるか、「いつの時代でも共感できる」となるか、それは誰にも分かりません。

 けど、機械音痴でスマホからガラケーに戻した私にラインの描写なんか書けるはずがありません。ええい、と腹をくくったのを今でも覚えています。

 おかげさまで文通のシーンは奇跡的に人気となり、順調に巻を重ねておりますので、創作の神様&読者に感謝です!

 さらに、4巻『キモチ、伝えたいのに』5巻『失恋修学旅行』あたりから、新たなキーワードが入ってきました。主人公の母親の小さなヒミツです。どうも、ひかり君のお父さんとなにやらあるようで? こんな書き方をしてしまいますと、大人のみなさんは、昨年流行った大人のあの問題か? と考えてしまうかもしれませんが、もっと深く悲しいことかもしれませんよ! というわけで、小学生版切ない韓流ドラマ「君約シリーズ」、今後、嵐の予感です。

(みずの・まい)●既刊に『たったひとつの君との約束~また、会えるよね?~』『たったひとつの君との約束~はなれていても~』など。

『たったひとつの君との約束~失恋修学旅行~』"
集英社
『たったひとつの君との約束~失恋修学旅行~』
みずのまい・作
U35(うみこ)・絵
本体640円