日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『せんそうをはしりぬけた『かば』でんしゃ』 間瀬なおかた

(月刊「こどもの本」2018年6月号より)
間瀬なおかたさん

いつまでも語り継ぎたい”戦争”

 先の大戦中、私の両親は満州(現在の中国東北部)にいました。歳の離れた長兄と次兄は、中学生の時に満州で終戦を迎えました。また、満州で女の子と男の子が幼くして亡くなっています。私の姉と兄に当たります。

 私は一九五〇年生まれ。「戦争を知らない子どもたち」といわれた世代です。子どもの頃、母が満州の話をよくしてくれました。戦争で腕や足を無くした人を見かけることもありましたし、戦争体験を語る人も大勢いました。

 時が経ち、・戦争・は遠くなっていきました。今はもう戦争体験を語れる人は少なくなってしまいました。やがてはいなくなってしまいます。

 世の中の動きを眺めていると、戦後が終わり戦前が始まったような気がします。「戦争はいやだ!」と声を上げておきたい、その思いを作品として残しておきたいと思うようになりました。そんな折、戦争中に空襲を受け、銃撃の痕が残る電気機関車が現存することを知りました。

 初めは、この電気機関車EF551の記録をそのまま描けば絵本になるかなと考えていたのですが、想いを巡らせている内に、物語の形をとって立ち上がってきました。そこで想像を加えたお話として描くことにしました。

 私は乗り物絵本をいくつか描いてきましたが、乗り物のお話としてではなく、旅のお話として描いてきました。

 戦争が起こってしまったら、自由に旅行をすることもできなくなってしまいます。家族で楽しい旅行ができるのも、平和だからこそです。

 戦争が起こってしまったら、「戦争はいやだ!」と言うこともできなくなってしまいます。今の内に言っておきたいと思います。「戦争はいやだ!」

 戦争を知らない私ですが、親の世代、祖父母の世代から・戦争・を語ってもらいました。語ってもらったものを次の世代に語り継がなくてはいけないと考えています。

 そして、今の子どもたちが、いつまでも「戦争を知らない子どもたち」でいられるようにと願います。

(ませ・なおかた)●既刊に『でんしゃでいこう でんしゃでかえろう』『しんかんせんでいこう』『にんじゃはなまる』など。

『せんそうをはしりぬけた『かば』でんしゃ』"
ひさかたチャイルド
『せんそうをはしりぬけた『かば』でんしゃ』
間瀬なおかた・作・絵
本体1、400円