こどもの本

私の新刊
『おかしなめんどり』 林 なつこ

(月刊「こどもの本」2018年2月号より)
林 なつこさん

私の昔話

 この『おかしなめんどり』は、私がはじめて作と絵の両方を担当した本です。絵本塾で絵本作りの基礎を学んで間もない頃に原案を組み立てたということもあってか、読者の方から「昔話ですか?」と言われるほど古風な物語に仕上がっています。

 登場人物のみんなが仲良くハッピーエンドを迎える現代的な絵本も大好きですが、原始的ともいえる昔話の力強さには、やはり抗いがたい魅力があると思います。私の子供のころからのお気に入りは、ペローの『長靴をはいた猫』です。粉ひき屋の小さな猫が、知恵を使って王様を手玉に取り、人食い鬼まで退治して主人を大出世させる様は本当に愉快です。しかしそれだけではなく、この物語に込められた「力を持たない小さな者でも、知恵を使えば困難を乗り越えたり、幸せを手に入れられる」という人生の教えは、子供のころから小柄だった私にも、ひとつの勇気を与えてくれたのです。

 このように、昔話の世界には、一筋縄ではいかない現実の世の中をどう生きていくのか?というシンプルな問いに対する答えが詰まっていると思います。『おかしなめんどり』も、わが子であるたまごとひよこを抱えためんどりが、知恵を使って捕食者であるきつねから逃げおおせる話です。子供たちはきっと、めんどりやひよこに感情移入して物語を読むのではないでしょうか。

 きつねやおおかみは、昔話においては言うまでもなく悪役です。しかし、この本を作りながら、私はむしろきつねのほうに感情移入してしまいました。描き終えたときには、めんどりよりもきつねのほうがかわいいと感じたくらいです。おいしいものをこだわって食べたい! ところがおっちょこちょいな性格が災いし、失敗ばかり…でも、あきらめるわけにはいきません。きつねにだって、生活がかかっているのですから! 世の中甘くないけれど、生きるためにがんばらなくちゃ。きつね目線で見れば、昔話もこんなかたちで大人の心に響くかもしれません。いつか、おなかいっぱいごちそうを食べたきつねの姿を描いてあげたいものです。

(はやし・なつこ)●既刊に『おしりのねっこ』『しゅっしゅっぽっぽトンネルですよ』『しましまかしてください』など。

『おかしなめんどり』
鈴木出版
『おかしなめんどり』
林 なつこ・作・絵
本体1、300円