日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『すまーとぞうさん』 赤川 明

(月刊「こどもの本」2018年1月号より)
赤川 明さん

ラクガキは楽しい!

 僕は普通、ラクガキをしながらお話を創っていきます。『すまーとぞうさん』も、そうでした。何げなく描いたラクガキの中に、”足の細長いぞう”がいたのです。「これ、面白いかも…」心がちょっと動きました。

 それからは、”足の細長いぞう”のラクガキです。足をもっと伸ばしてみたり、縮めてみたり、渦巻きにしてみたり、波線にしてみたり…ラクガキをしながら探っていきます。すると、「細長い足なら、きっと絡まり易いだろうな…絡まっちゃったらどうなるのだろう?」なんて発想が出てきました。

”足の絡まるぞう…”変です。相当変です。この「変だな」「おかしいな」という感覚は、僕の好物です。僕の心はどんどん動いて、このぞうに集中していくのです。そして、「絡まった足をほどいてやろう」と、やっぱり自分も細長い体のへびやらりゅうなどが出てきました。自身細長いということが、なんとなく説得力がある気がするからです。その内、「何処かが細長けりゃいいや!」とばかりに、しっぽの長いさるや、首の長いだちょうも御登場です。

 ラクガキをしながら、いろいろ出てきて僕の心も盛り上がって…そして思いました。「こいつらみんな、なんてお節介で、なんてお目出度くて、なんてあったかいのだろう!」僕はひたすらわくわくしているのです。

 でもちょっとは理性を働かせます。このお話のぞうは、足が細長いために絡まってしまうけれども、それを”困る”とは、したくありませんでした。”楽しむ”にしたいと思いました。

 ひとつのお話としてまとめる作業には、いつも苦労します。”変”であっても”破綻”しないように、そのギリギリのところ…。編集者との話し合いの中でどうにか創っていきます。

 僕の絵本は基本、面白ければいいと思っています。子供が僕の絵本を読んで、大笑いして、その気分のまま外にでも出て、元気に遊んでくれたらいいんじゃないのかなぁ…なんて思っています。

(あかがわ・あきら)●既刊に『おとなりはそら』『かあーっこいい!』『たこしんごう』など。

『すまーとぞうさん』
文研出版
『すまーとぞうさん』
赤川 明・作・絵
本体1、300円