こどもの本

私の新刊
『ごはんはおいしい』 ぱくきょんみ

(月刊「こどもの本」2017年11月号より)
ぱくきょんみさん

ごはんが大好き

 わたしは、ごはんが大好きです。

 ごはんは、いつもわたしたちの食卓にあります。何しろ「ごはん!」といえば、食事そのものを指しているくらい、身近にある大切なもの。この絵本でいちばん伝えたいことは、まさにその大切さです。

 幼いころから目に焼きついてきた食卓の景色は時折まざまざと甦ります。

 昭和三〇年代の食卓はまだ畳の上のちゃぶ台でしたが、家族でまあるく囲みながら、箸をにぎりしめ、おかずに手を伸ばしていくときの「喰う」気はきょうだいのあいだの競い合いも相まっておおいに盛り上がりました。箸づかいもぎごちない子どものわたしたちは、食を分かち合うことの楽しさと同時にちょっぴり厳しさにもふれたのでした。そのなかで、ごはんは、いつもそこにある、という安心感を与えてくれました。お茶碗によそわれてつやつやと満面の笑みをたたえて、おかずに目がうつる子どもたちを静かに見守っているようでした。

 わたしが台所に立つのが好きになったきっかけも、ごはんが大好きだったからです。

 炊きたてのごはんの真っ白い湯気は勢いよくて、熱くて、ほがほがと鼻に吸いこみながら「ごはんは湯気までおいしいなあ」と感動しました。そう、そのとき、炊きたてのごはんをおしゃもじでおこしていたのは、母を含め、女性たちでしたが、ひとりひとりの満面の笑みも忘れられません。わたしの育った家には住み込みで働く女性がいつもいて、いろいろなことを教えてもらったものでしたが、ごはんについてもたくさんのお話を聞いたものです。

「ごはんはお米だよ」

「お米は田んぼで育つんだー」

「ごはん一粒一粒大切に食べなくちゃ」

 いまでは、炊きたてのごはんをおしゃもじでおこすのは、わたし自身になり「ごはんだよ~」と家族へ呼びかけています。あの遠い日から、「ごはん」が春夏秋冬をぐるりぐるりとめぐりながら、生きていく上でほんとうに大切なものを育んでくれたこと、皆さんにも味わってもらいたいな。

(ぱくきょんみ)●11月新刊に絵本『はじまるよ』(熊谷守一/絵、0.1.2.絵本)、詩集『何処何様如何草紙』など。

『ごはんはおいしい』

福音館書店
『ごはんはおいしい』
ぱくきょんみ・文
鈴木理策・写真
本体1、600円