こどもの本

私がつくった本79
小峰書店 山岸都芳

(月刊「こどもの本」2017年10月号より)
フラダン
フラダン
古内一絵/作、今中信一/装画
2016年9月刊行

「編集を担当した『フラダン』が、今年の読書感想文全国コンクールの課題図書(高等学校の部)に選ばれました。震災から五年後の福島を舞台にした青春小説なんですが、そもそもは「福島の高校生たちがフラダンスを通じて仮設住宅へ慰問」というニュースを耳にしたのがきっかけでした。直感的に本になる! と思ったものの、その時の自分は前年に勤めていた会社が民事再生法の適用を受けて、無職の状態。震災後の沈鬱とした空気の中で、本の世界に戻れる可能性なんてほとんど残っていないように感じていたころでした。あれから六年、いろんな幸運にめぐまれて、本がかたちになって、どうにかこうにか編集を続けていられるのは、あの時のニュースのおかげではないか、慰問活動をしていた高校生たちのおかげではないかと感じる時があります(その後、実際に取材をさせてもらいました)。そんなわけでぼくにとっても特別な一冊、高校生たちに届きますように」Facebook投稿より 

 本年度の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書が発表になった後に、自分のFacebookにあげたものです。いま読み返してみると、文章が前のめりで恥ずかしくなりますが(酒はいってたな……たぶん)、だからこそ、その時の気持ちを率直に語っているなとも思い、転載してみました。

 高校生たちの慰問のニュースを耳にする数カ月前、ほんの短い間でしたが、仙台市内に宿をとって、沿岸部のゴミや瓦礫の撤去のボランティアをしていました。その時に目にした光景やにおいや音、出会った人たち、その場で感じたさまざまな事が、東京に帰った後も、未消化のまま腹にたまっており、その事が前述のニュースに強く引きつけられた理由だったのかもしれません。

 いまの会社に入ってしばらくたったころ、以前から仕事をご一緒したいと思っていた古内一絵さんにお目にかかる機会を得ました。その時、いろいろ話をする中で、「高校生・フラダンス・震災」をテーマに本を書いてくれませんかとご提案しました。まさかその場で答えがいただけるとは思ってもいませんでしたが、古内さんからは、二つ返事で「ぜひ書いてみたい」とおっしゃっていただけました。その後、作者と二人、福島を訪れ、フラガールズ甲子園の様子や、ニュースになった元高校生たち(彼らはすでに卒業していました)への取材、モデルにした高校とその周辺などを見てまわったのですが、その旅の終盤、古内さんはこんな事を言われました。「わかりました。この本は笑いをベースに書く本なんですね」。それを聞いた瞬間、「ああ、本はできた」と感じました。ユーモアでもって福島を描く。それはニュースに着想を得た時から、自分なりに考えていたことでもありました。