こどもの本

私の新刊
『まえがみたろう』 スズキコージ

(月刊「こどもの本」2017年10月号より)
スズキコージさん

紙芝居『まえがみたろう』ぼくの村で上演?

 一九五四年(ぼくが静岡県浜松の北田舎の小学一年生の頃)紙芝居のおじさんが拍子木を鳴らして村の子供達を集め、ぼくの家の目の前の広場に停めたボロい自転車に取りつけた紙芝居を、タイコをドドーンとたたき声高らかに演じ、ぼくらは五円払って、わりばしの先にダンゴ状にくっついた水飴をねちねち練りながら見物した。だけど母さんに五円もらえない時は便所の男便器の上に乗り、小さな窓から見物した。

 そして、今『まえがみたろう』前後編が堂々と完成! あのぼくの村の紙芝居のおじさんに演じてもらえたらなあと想うと胸は高鳴るバカリだ。

 前編で、まえがみたろうは村を出発、火の鳥、お正月さん、白い天馬、うし鬼の親子、くじら、大洪水におびえる人々と出会い、ますます勇気リンリン、命の水を求めて、険しい山奥のそのまた奥まで、わけ入って行くのだからたまらない! まったく後編が待ちどおしい。

 ここで昔のぼくの村の紙芝居のおじさんは、クイズをやったりして、(例えば、富士山の高さはどのくらいだあ? ぼくは、ミナナヤム(皆悩む)=三七七六メートルと答え、「当たりーイ ドドーン」で、もう一本水飴をもらった)。

 そしておじさんは自転車をゴキゴキこいで帰ってゆく!

 そして次の週、後編の始まりィ!

 まえがみたろうは恐れる事なく、気味の悪い鱗におおわれた城にとらわれの身の美しい姫を救うべく乗り込んでゆく。そうして、まえがみたろうは、姫の身代わりになると、美しい城主の美青年があらわれ、毒々しくたろうに襲いかかるやいなや、大蛇の姿で正体を現わす。

 この大蛇はぼくの得意とするところで、一枚一枚の鱗をびっしり描き、気味の悪い城が大蛇と共に崩れ落ちるシーンは夢中で描き切り、まえがみたろうも命の水を手に入れ、火の鳥を救い、ぼくも命の水を一気に飲みほし、めでためでたのフィナーレとなりました。松谷みよ子さんバンザイ!

(スズキコージ)●既刊に『ドームがたり』(アーサー・ビナード/作)、『でんでんでんしゃ』(谷川俊太郎/文)など。

『まえがみたろう』(前編) 『まえがみたろう』(後編)
童心社
『まえがみたろう』(前編・後編)
松谷みよ子・脚本
スズキコージ・絵
本体各2、300円