日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
「絵で見るシリーズ」 柳原明彦

(月刊「こどもの本」2017年8月号より)
柳原明彦さん

知るって楽しい

 二年あまりをかけた「絵で見るシリーズ」の三部作は、まず絵を描くことから始まりました。植物画を描くのが好きで描いているうちに、捨てるにはもったいない絵がたくさんたまってしまい、何かに使えないかと考えたとき、子供向けの絵本を作ることを思いついたのです。ですから文章は後付けです。
絵をながめながら、さて、何を書こうかなと適当に考えるわけです。

 しかし、それがどれほど大変なことか、書いているうちにわかってきました。ふだん見慣れている野菜や果物や花について、これほど知らないことが多いとは思いませんでした。専門書やインターネットで調べては確認し、監修者の先生に原稿を見ていただき、また調べて書き直すということの繰り返しです。例えば、「しょうぶ」の花がきりたんぽのようなかたちをしていることなどは、書いている本人が信じられないというありさまです。ほかにも「ほんとかよ」と思いながら文章を書いていることが、しばしばありました。

 子供たちがこの本を読むときも、随所で同じような思いをするでしょう。
そのことが、好奇心が旺盛な子供たちにとって、物事を知ることの楽しさ、調べることのおもしろさを自ら育む糧となることを、願っております。

「絵で見るシリーズ」は、植物図鑑ではありません。いわば野菜や果物や花についての雑学を集めた本です。しかし、雑学もまたよきかな。本格的な植物図鑑や専門書もいいけれど、雑学もけっこうおもしろい。書いているうちにつくづくそう思うようになりました。もう一つ、これも植物図鑑には絶対にないことですが、書いているうちに、つい自分の思い出ばなしを書いてしまうのです。いま読み返してみると、編集者はよくこんな文章を許してくれたなと、自分でもあきれています。

 絵本や図鑑を作った経験が全くない私がこのような本を三冊も出版できたのは、監修をしてくださった先生や、懇切に指導してくださった編集者をはじめ、多くの方々のご協力のおかげだと、深く感謝しております。

(やなぎはら・あきひこ)●シリーズ構成は『調べてなるほど!野菜のかたち』『調べてなるほど!果物のかたち』『調べてなるほど!花のかたち』。

「絵で見るシリーズ」(全3巻)
保育社
「絵で見るシリーズ」(全3巻)
柳原明彦・絵と文
縄田栄治・監修
本体各2、700円