日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『たまらんちゃん』  つぼいじゅり

(月刊「こどもの本」2017年6月号より)
つぼいじゅりさん

『たまらんちゃん』が生まれるまで

 二〇〇九年の冬、絵本を勉強したいと思っていた僕は、平日は広告制作会社でデザイナーをしながら、毎週土曜日に築地にある「パレットクラブスクール」の絵本コースに通っていました。

 ある日の授業後、パレットクラブの仲間たちと、通い慣れた居酒屋に行きました。来週の課題は、オリジナルで考えた絵本ダミーの発表。仲間たちと談笑しながら、僕はちっちゃなノートにいろいろなアイデアを書き出しました。そのメモの中にあったのが『たまらんちゃん』です。メモしていたストーリー展開は、ほぼ出版された絵本と同じもの。「次の授業で、たまごをテーマに絵本を作ってくるから!」僕は仲間たちに宣言しました。

 授業当日の朝、仕事で泊まっていた会社の中で『たまらんちゃん』のダミーを作りました。みんなを楽しませたい一心でした。授業でドキドキしながら読み聞かせると……生徒のみんなも、講師の松田素子さんも、笑って楽しんでくれました。

 絵本を描き進めるなかで、実際にパウンドケーキを作りました。作ってみると、「たまちゃんとらんちゃんは今こんな気持ちかな」と思いを巡らせることができたり、「メレンゲはこんな風にツノが立つんだ!」などと発見があったりして、場面作りに大きく役立ちました。保育園や児童館に、試作中の『たまらんちゃん』を読み聞かせにも行きました。そのとき見た子どもたちの笑顔は、僕の支えになっています。それから、いろいろな方々との関わりを経て、七年越しで『たまらんちゃん』は完成しました。

 人生では、いろいろな出来事が起こります。たまちゃんとらんちゃんが途中で離れ離れになってしまったように、大切な誰かとずっと一緒にいることは、とても難しいことです。『たまらんちゃん』を読んで、身近にいる人を大事にし、一緒にいられる日常に感謝する気持ちを持ってもらえたら嬉しいなと思います。

『たまらんちゃん』は、みんなの心のそばで、いつもいっしょだよ。

●本書が初の著作。

『たまらんちゃん』
金の星社
『たまらんちゃん』
つぼいじゅり・さく・え
本体1、300円