日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本33
大日本図書 當田マスミ

(月刊「こどもの本」2012年3月号より)
大日本図書の生活科えほん

『大日本図書の生活科えほん』
平田昌広/ぶん、平田 景/え
2012年2月〜

 二〇一二年二月から三月にかけて、新シリーズ「大日本図書の生活科えほん」を発行します。第一弾は「食」をテーマにした三冊、『ありがとう! きゅうしょく』『そだてておいしい! ピーナッツ』『チャレンジ! どんぐりクッキー』です。

 新しいものを立ち上げるときには多くのことを考えますが、このシリーズの特徴は、なんといっても「大日本図書の生活科」というところです。小学校の生活科の教科書を発行している出版社ならではの絵本を目指そうという主旨があります。

 児童書によく触れ、新しいことをどんどん吸収し、想像力をどこまでも広げられる、という読者の年齢から見るとターゲットは教科書も絵本も同じと考えて、このシリーズはスタートしました。

 ただ同じ会社であっても、書籍担当として「生活科」のことはよくわかりません(笑)。そこで、編集担当の「生活科」勉強が始まりました。教科書を読み、指導要領を読み、生活科編集の者をつかまえては話を聞き、小学校の公開授業に足を運び……。そして「生活科」は、人が生きていくうえでの基本となる教科なんだと感じたとき、著者にご依頼しました。平田昌広さんと平田景さんです。

 お二人の「できるだけ本当のことを伝えたい」という思いと取材への意欲はすばらしく、ご相談をすると、とても喜んで引き受けてくださいました。何度も打ち合わせを重ね、給食センターへの取材にとどまらず、平田さんの家ではピーナッツが育てられ、秋にはどんぐりを山のように拾って、クッキー作りが行われました(この他にもたくさんのことがありましたが書ききれません!)。

 このシリーズのもう一つの特徴は、大日本図書の「生活科」教科書を執筆されている先生による、先生や保護者の方へのメッセージを盛り込むことです。「生活科」の大切さを、ぜひ大人に再認識してほしいという思いから決定しました。

 シリーズ三冊分のラフができあがったときには、先生にもご覧いただきました。ドキドキしながら待った一週間。先生から「よくできてますね。おもしろかったですよ」とコメントをいただいたときは、本当にホッとしました。もしかすると、新シリーズへの自信が初めて生まれた瞬間かもしれません(笑)。

 そして今、著者のお仕事は終わりました(あとは色校を待つのみ!)。そんなとき、著者から「この絵本が終わって寂しいです」とのメッセージをいただいたのです。編集者としてこんな嬉しいことはありません。多くの読者に読んでもらうことも喜びです。でも一緒に作り上げてきた著者が終わりを惜しむ気持ちになってくださることも喜びです。

 あとは売れることを祈りつつ、三冊ができあがるその日まで、がんばりたいと思います!