日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ともだちのひっこし』 宮野聡子

(月刊「こどもの本」2017年5月号より)
宮野聡子さん

『ともだちのひっこし』によせて

 小学校時代、私には仲良しの友だちのYちゃんがいました。

 毎日学校が終わると、お互いの家を行ったり来たり。漫画づくりと、「ごっこ遊び」が大好きで、Yちゃんの家で人形や着せかえで遊ぶときは、いつもたぬきのぬいぐるみ、「ポンタ君」が一緒だったことを覚えています。

 けれど、その後、Yちゃんが引っ越しをしてしまい、ときどき「元気にしているかな?」と、思いを巡らせるばかり。

 ですから、絵本の題材が「引っ越し」に決まったとき、真っ先に思い浮かべたのは、このYちゃんとの思い出でした。

 引っ越しによる別れというのは、卒園や卒業の別れと違って、特別な寂しさを伴いますね。もう会えないかもしれないという不安が、心にぽっかり穴を開けるのでしょうか。

 もしもそうだとしたら、その不安な気持ちが、絵本を読むことによって少しでも和らぐといいな、と、私は思いました。

 ・引っ越しをしたら、もう会えない・という不安感を、・引っ越しをしても、また会える・という希望に変えるくらいのポジティブさがあってもいい。

 そうして出来上がったのがこの作品です。

 ラストシーンの別れの場面で、主人公のふたりは大事なぬいぐるみを交換し合いますが、それは、またいつか絶対に会えるという希望のシンボルなのです。

 さて、冒頭に紹介した私の小学校時代の友人ですが、先日、何十年かぶりに、某所でばったり再会することができました!

 目が合った瞬間に、お互いのことがすぐにわかったのも嬉しかったのですが、なによりもっと嬉しかったのは、あのポンタ君が、まだYちゃんの家にいるということ……!

 今では、Yちゃんと一緒に美術館へ行ったり、映画を観に行ったりします。遊び方は変わったけれど、今も昔と変わらず、私の大切な友だちです。

(みやの・さとこ)●既刊『あとでって、いつ?』『いちばんしあわせなおくりもの』『おぞうにくらべ』など。

『ともだちのひっこし』
PHP研究所
『ともだちのひっこし』
宮野聡子・作・絵
本体1、300円