こどもの本

私がつくった本76
文溪堂 国頭昭子

(月刊「こどもの本」2017年3月号より)
3日ずつのおくりもの

『3日ずつのおくりもの』
レミ・クルジョン/作、こだましおり/訳
2016年12月刊行

「子どもの頃、死ぬのが怖かった。夜、寝るとき、そのまま目が覚めなくなったら…と考えたり、いつまでも生きられれば…などと考えたりしていた」

 そんな経験を持っている人は案外多いのではないかと思います。かくいう私もその一人でした。

 でも、人生も半ばを過ぎたこの年になると、果たしていつまでも生き続けるのが幸せなことなのか…ちょっと疑問も生じてきました。

 そんな中、訳者のこだましおりさんから紹介されたのがこの絵本です。この絵本は、子うさぎリトルがその曾祖父であるホープじいさんからいろいろなことを学び、別れる中での心温まる交流を描いたものですが、このホープじいさん、毎年誕生日祝いとして家族や友人みんなが「3日ずつ長生きするように」と願ってくれているおかげでずっと長生きして、とんでもない年寄りになっているというちょっとユニークな設定がついていました。一人一人はわずかな日数でも、家族、親類、友人…と合わされば、誕生日毎に寿命を一年更新するくらいの日数にもなり、ホープは、ある意味不死の存在でした。

 ところが、ある日ホープじいさんは、「もう十分長生きした」から今年の誕生日は、本やCD、DVDが欲しいとリトルにいい、その年の誕生日には、たくさんの本やCD、DVDが贈られます。その日からホープじいさんは、リトルに畑仕事を引き継ぎつつ、本やCD、DVDを楽しみながら、ある日静かに息をひきとるのです。

 ここで前述の「ずっと生き続けることは幸せなのか」との問いに戻ります。恐らく長生きする中でホープじいさんは数々の別れを経験してきたことと思います。親兄弟、親しい友人…長く生きるということはそういった痛み、残される悲しみも背負うこと。そうした中でホープじいさんは「もう十分長生きした」といい、残された日々を本当に愛おしむように、リトルと過ごし、穏やかに「さよなら」をしていったのでしょう。ここには、長生きをする以上に幸せな「別れ」「終わり」があるように思います。

 今を生きるのに一生懸命な子どもたちに、このような人生の「終わり」を意識させる絵本を提示することへの異論もあるかもしれませんが、「終わり」から目を背けて、ある日突然現れる「終わり」に大きなショックを受けるよりも、こうした絵本などで少しずつ「さよなら」「別れ」に免疫をつけることが大事なのではないか…そして、「終わり」があるからこそ、より「今、生きていることのすばらしさ」を感じ取ってもらえれば…そう思いながら作った本です。

 そこには、かつて、布団の中で漠然とした「死」の恐怖に怯えていた自分と同じ子どもたちを安心させたい…との思いもありました。