日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『でてくるでてくる』 岩田明子

(月刊「こどもの本」2017年3月号より)
岩田明子さん

でました
でました

「にょろにょろ~っとした絵本を一緒に作りませんか?」という編集者のお誘いからこの絵本作りが始まりました。確かに私もにょろにょろ系にゅるにゅる方面は好きですし、得意分野でもあります。ですが一冊丸ごとにょろにょろなものは今まで作ったことがありません。

 あれこれ考えていると、子供の頃、公園の水飲み場でワクワクしていたことを思い出しました。あの水飲みの丸い頭の形、ピューッと勢い良く飛び出すおいしそうな水。その水飲みからジュースが、食べ物が、そして動物が、にゅるにゅる出てきたら楽しいだろうなぁ。そんなことを考えているうちに、公園のいろいろな遊具から動物たちがにょろにょろにゅるにゅる出てくるイメージが膨らんでいきました。

 ジャングルジムから海亀が出てくる場面は、描いていて楽しかったものの一つです。無機質な鉄の格子が、グニャリと海亀の甲羅の模様に変化していく様子。頭の中のイメージを再現すべく、細い筆で何度も絵具を重ねました。

 実は初めは丸い回転ジャングルジムを描く予定でした。が、今では多くの公園で撤去されているとのこと。ラフの途中で四角いジャングルジムに変更になりました。うちの息子も幼稚園の頃、回転ジャングルジムからふっ飛んで、けがをしたことがあります。でも少々危険な遊びにこそスリルを感じるものですよね。こうした遊具はだんだんと姿を消していくのでしょうが、ちょっと寂しい気もします。

 さて、この絵本のアイデアの源、水飲みからは何が出てくるのでしょう?それはラストのお楽しみ。一番大きな動物がブッシャー!と出てきます。

 最近気づいたのですが、私はなんとなく身体の感覚に訴えるような絵本を作りたいと思っているようです。昼間とはまた違った真夜中の公園、「でてくる」動物たちと一緒にざざざー、にゅるる~ん、ちくちく、むにゅむにゅ~、と体がモゾモゾする感覚を体感して頂けたら嬉しいです。

(いわた・あきこ)●既刊に「ばけばけばけばけばけたくん」シリーズ、『こちらたこたびょういん』『はらぺこソーダくん』など。

「でてくるでてくる」
ひかりのくに
『でてくるでてくる』
岩田明子・作・絵
本体1、280円