日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本75
大日本図書 山本陽子

(月刊「こどもの本」2017年2月号より)
「こころのほんばこ」シリーズ(既5巻)

「こころのほんばこ」シリーズ(既5巻)
小宮 由/訳
2015年11月~

 翻訳家の小宮由さんから、海外の原書を預かりました。それは、黒いぶちのある白い犬がかけまわって奮闘したり、ちびっこが一人でまぬけなギャングと対決したり、土でつくった人形が何でもかんでものみこんでしまったり、楽しいお話ばかりでした。これは、本にしたい! 子どもたちも、私と同じように、いや、私以上に、ワクワクしながら登場人物と心を重ね、色々な体験をするはず。ここから、「こころのほんばこ」シリーズは、スタートしました。

 そして、このシリーズの肝は、「子どもたちは、本を通して、うれしいこと、悲しいこと、苦しいことを我がことのように体験し、その体験を・こころのほんばこ・にたくさん蓄えてほしい。その積み重ねこそが、友達の気持ちを想像したり、喜びをわかちあったり、つらいことがあっても乗り越える力になるはず」という小宮さんの願いです。そのような体験ができる本を、厳選していただきました。

 ただ、どれも発行年が古い本でしたので、権利者の確定が難しいのです。限られた時間の中で冷や汗をかくこともありましたが、ねばりづよく確認をしてもらい、なんとか五冊を契約にこぎつけた時は、喜びもひとしおでした。

 低学年の子どもたちが読みやすいように、文字の大きさやイラストの配置も考えました。かといって、平易な日本語を使うということではなく、訳は、その物語の真にせまる研ぎ澄まされたものでしたので、お話の楽しさや深みは少しも損なわれることはなく、登場人物が生き生きと動き出すものでした。

 また、原書は英文なので横書きなのに対し、このシリーズは、前述の意図から縦書きに変更します。原書のすばらしさを再現できるように、デザイナーさんとも、何度もやりとりをしました。おかげで、著作権者からは、「大変すばらしい」という言葉をいただき、心底ほっとしました。

 二〇一六年三月の時点で五冊を刊行し、うれしい感想をたくさんいただいたので、二〇一七年一月より、第二弾の刊行が決まりました。『おしろのばん人とガレスピー』(B・エルキン/文、J・ドーハーティ/絵)『サンタクロースのはるやすみ』(R ・デュボアザン/文・絵)『たんけんクラブ シークレット・スリー』(M・マイリック/文、A・ローベル/絵)と続きます。これらも、ユーモアあり、智恵や気づきあり、あたたかさとやさしさがある、子どもたちが・こころのほんばこ・に入れるのにぴったりな三冊です。もちろん、大人も楽しめますよ!ぜひ、読んで、子どもたちに手渡していただけたらうれしいです。