こどもの本

私の新刊
『ぼくのいいとこ』 石井睦美

(月刊「こどもの本」2016年12月号より)
石井睦美さん

思いがけない絵本

 絵本に取り組むとき、わたしはいつも、福音館書店でたくさんの絵本を作られた松居直さんの「50パーセントの絵と50パーセントの文章で100パーセントの絵本ができるのではなく、100パーセントの絵と100パーセントの文章で、100パーセントの絵本ができる。」という言葉を思いだします。うーん、難しい。
 さらに絵本では、絵と文章の兼ね合いみたいなものもとても重要になります。松居さん流に言えば、120パーセントの絵と80パーセントの文章でもだめだし、またその逆でもいけません。絵本はほんとうに難しい。
 ところで、今回翻訳をした『ぼくのいいとこ』は、そんな100パーセントの絵本でした。
 この作品には、『きもち』という姉妹編があって、作品としてはそちらが先です。編集の方から『きもち』の原書を初めて見せていただいたとき、さまざまな感情をダイレクトに言葉にしていることと、色使いといいフォルムといい、弾けた絵にびっくりしました。びっくりなんていう表現は甘くて、度肝を抜かれたという感じです。
 けれど、その絵が、ひとつひとつの「きもち」とそれを表現している文章とにぴたりとはまっていたのです。いままでにない―少なくともわたしは目にしたことのない絵本でした。
 それから三年が経って、この『ぼくのいいとこ』を翻訳したのですが、この本も思いがけないものでした。原題は『The Way I Act』、行動についての絵本です。ぼくやわたしのさまざまな行動とその発端になった気もちとが端的に描かれていました。登場する子どもたちは、みんな生き生きして、幸福そうです。そんな彼らを見ていると、おとなのわたしでさえ、勇気がわいてきます。
 ところで、100パーセントの翻訳絵本にするには、100パーセントの日本語、つまりいちばんふさわしい日本語にする必要があります。わたしの訳が、そうであることをこころから願っています。

(いしい・むつみ)●既刊に『皿と紙ひこうき』『しろうさぎとりんごの木』、既訳書に『ジャックのあたらしいヨット』など。

ぼくのいいとこ
少年写真新聞社
『ぼくのいいとこ』
スティーヴ・メツガー・ぶん
ジャナン・ケイン・え
いしいむつみ・やく
本体1、900円