こどもの本

私の新刊
『こころのともってどんなとも』 最上一平

(月刊「こどもの本」2016年9月号より)
最上一平さん

「ともだちって」という種

『こころのともってどんなとも』は、前作『ともだちのはじまり』を受けた物語です。『ともだちのはじまり』で、じゅじゅという女の子が、しあわせになるには、じょうぶな体と、こころのともを持つことだといいます。同級生のさとは、このいっぷう変わったじゅじゅとともだちになります。
 さて、そして今回の物語ですが、夏休みのある日、さとはじゅじゅの家におとまりすることになります。
 ともだちということばは、小さい頃からよく使うし、ともだちが大切であることは、周知の事実といってよいでしょう。でも、ともだちってどんなものなのか、どうすればともだちになれるのか、なぜ大切なのかは、なかなか難しい問題です。それも、こころのともなんていったらなおさらです。
 こころのともって、いったいどんなともだちなんでしょう。子どもたちの胸の中にそんな問いが生まれて、小石が落ちていくように心の底まで落ちて、小さな種のようになってくれればいいなあと思っています。誰かと出会って、その種が芽を出したり葉をひろげたりしてくれればすばらしいです。
 さとはじゅじゅのことを少しずつ知っていきます。新しいじゅじゅを発見していくわけです。それは驚きであり、喜びであり、好きになっていくことでした。このあたりにこころのとものカギがかくれているように思います。
 私はこれまで、いいかげんな性格が災いして、ともだちをなくしたりもしたけれど、何度となくめぐってきたピンチの時、いろんなともに助けられました。すでに私はおじいさんという歳になりましたが、こういうともだちが私の生きてきた道に立って、「こっちこっち」と手まねきしてくれたようにも思います。
 私の心の中に落ちてきたともだちの種も、今では花を咲かせたり実をつけたりしているようです。その小さな実が『こころのともってどんなとも』になったといってもいいかもしれません。
 絵はみやこしあきこさん。絵から少女達の心の声が聞こえてくるようです。

(もがみ・いっぺい)
●既刊に『ともだちのはじまり』『ゆっくり大きくなればいい』『ぬくい山のきつね』など。
『こころのともってどんなとも』

ポプラ社
『こころのともってどんなとも』
最上一平・作 みやこしあきこ・絵
本体1、000円