日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『さがして! 見つけて! ぼくの犬』 秋山正義

(月刊「こどもの本」2016年9月号より)
秋山正義さん

さがして! 見つけて! 自分の世界

 子どもの頃、愛犬が逃げてしまったことがあります。見つかるまでの間、不安な思いをしました。『さがして!見つけて! ぼくの犬』でも、主人公の愛犬チョコが逃げてしまったところから物語は始まります。犬は、時にいろんなことを黙って聞いてくれる良き相談相手であり、友人です。そのチョコが帰ってこない不安の中、主人公のポムは彼を探す旅に出る事を決意します。まさに知らない世界へと、一歩踏みだすのです。
 私たちは、生まれてから意外に狭い範囲の中で育っていきます。子どもなら幼稚園や保育園、小学校の中のクラスが主な世界になります。三十人前後のコミュニティーでうまく適応できなければ、とても居づらい場所になってしまうでしょう。特にその世界が全てだったりすると、まるで自分には居場所がないような気分になるかもしれません。
 しかし、うまくいかなくても、どんなに辛くてもずっとは続きません。小さな世界のある時期のことで、決してそれが全てではありません。大きな視野で、一歩踏みだせば、いろんな世界が広がっています。
 私には、絵という世界がありました。そこで出会った人にどれだけ救われたかわかりません。自分と同じ価値観の人に出会えたことは、私の宝物です。どんな人にも自分を認めてくれたり、必要としてくれたり、その人らしく好
きな自分でいられる場所は必ずあります。そういう場所に出会えると、人はもっと強くなれます。
 その場所がどこにあるのかは、勇気を出した本人にしかわかりません。私は、この本でポムが旅に出るように、子どもたちにはいろんな経験をして、いろんな人に会って、視野を広げて自分自身の輝ける世界を見つけて、人生を謳歌してほしいのです。
 最後に。ページごとの探しアイテム以外にも色々なものを描き込んでみました。親子、友達、みんなで探し物を決めて見つけあいっこするなど、この本で自由に遊んでくれると、うれしいです。

(あきやま・まさよし)
●本書が初の著作。
『さがして! 見つけて! ぼくの犬』
学研プラス
『さがして! 見つけて! ぼくの犬』
秋山正義・作・絵
本体1、360円