日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『大さわぎ! ばけもの芝居と白いねこ』 岩崎京子

(月刊「こどもの本」2016年8月号より)
岩崎京子さん

私の未知との遭遇

 週に一回ですが、文庫活動といって、近所の子どもたちと、本を読んだり、折紙をしたり、紙芝居をしたりしています。じつはこの子たちのいうこと、することをもらって、物語作りができないかなあというコンタン(下心?)もあったんですが、うまくいきません。
 今の子って、おしゃれでセンスも垢ぬけています。第一、名前からしてテレビタレントみたい。着てくるブラウスの衿はオーガンジーのひらひら。おまけにビーズのバラの刺繍がしてあったり……。「アナと雪の女王」とか「白雪姫」のようです。
 やぼなおばさんは、必死。アクセサリー作りなんかしたら、喜んでくれるかと、庭にジュズダマを植えました。秋、貝がらのような白灰色の実がなり、それを糸に通して首かざりや腕輪を作りました。やはり、だめ。子どもたちのセンスにあいません。
「じゃ、お母さんにプレゼントしよう」
「ええーっ、うちのママこんなやぼったいのしない」
 こういうずれで、私は書けなくなりました。
 私の子ども時代(戦前になります)を思い出し、物語作りをしてみましたが、これも受け入れてもらえません。
 そこで思い切って、二百年くらいバックしてみました。私にとって二百年未来と同じ。手さぐり、足さぐりで、未知の世界に入ってみました。そこで松あんちゃんや、おはなちゃん、貧乏神、見越しの入道をはじめとするばけものたちなんかに出会えました。
 時々、江戸切絵図を片手に、御徒町や下谷広小路を歩いていくと、家出した白いねこのおたまさんが歩いてくるんです。
 目下、私はこの江戸の町歩きを楽しんでいます。
 いろんな子ども、おかしな大人、ちょっと変わったばけものたち、へんな事件に出会えます。

(いわさき・きょうこ)
●既刊に『かさこじぞう』『建具職人の千太郎』『街道茶屋百年ばなし 熊の茶屋』など。
『大さわぎ! ばけもの芝居と白いねこ』

文溪堂
ばけもの長屋のおはなちゃん
『大さわぎ! ばけもの芝居と白いねこ』
岩崎京子・作
長谷川義史・絵
本体1、300円