こどもの本

私がつくった本71
学研プラス 髙橋美佐

(月刊「こどもの本」2016年5月号より)
10歳までに読みたい世界名作(既24巻)

10歳までに読みたい世界名作(既24巻)
横山洋子/監修
2014年6月創刊

「低学年の子どもたちが気軽に読める長編を」
 そんな編集部の思いが、そもそもの出発点でした。当時、短編集のシリーズを出版していましたが、読者ハガキに書かれた、「いつか長編に挑戦してみたい」という声に応えたいと思っていたのです。
 そこで白羽の矢が立ったのが世界名作でした。改めて読み返してみると、おもしろいのなんの! そこには、読む人の心をぐっとひきつけるエピソードと共に、冒険心・友情・愛・勇気……生きていく中で大切な、あらゆるものが詰まっていました。「名作はおもしろいから名作だったんだ」という当たり前のことに、今さらながら気づかされたのです。
 キャロルは知人の子どもを喜ばせるために、即興で『ふしぎの国のアリス』のお話を作って聞かせました。デュマは『三銃士』を新聞に連載して、当時の人たちから喝采を浴びていました。ドイルは一度死なせた『シャーロック・ホームズ』を、読者の熱い声に応えて復活させました。作者はこれらの作品を、居住まいを正して読むことを想定して書いたわけではなかったのです。そう、世界名作は、当時のエンタメだったはず! 重くて堅牢な本をずらりと書棚に並べることによって、名作のハードルを高くしたのは現代の大人だったんだなぁ、と感慨にふけりつつ、改めて今の子どもたちのことを考えました。
 とにかく「おもしろい!」と夢中になって読んでほしい。想いはシンプルです。いくら当時のエンタメとはいえ、子どもたちの生きる今とは、国も文化も風習も違うので、極力ストレスを感じず読み切れるように、工夫を凝らしています。
・親しみやすいオールカラーイラストで
・読みやすい大きな文字に、総ルビで
・一章を短く
・見せ場は必ずイラストに
 そして巻頭に「物語ナビ」という映画の予告編のような特集ページを作ることにより、ビジュアルで鮮明に当時のことを思い描けるように工夫しました。
 実現するためには、携わってくださった皆さんの並々ならぬ努力がありました。
「どうしてもここに絵を入れたいので、文を三行分減らしてください」なんていう編集部のお願いに、素晴らしい文章で応えてくださった編訳者の方々。
「当時の壁紙や家具を見せつつ、人物はキメポーズで読者に訴えかけるように」そんなややこしいオーダーにも的確に対応してくださった絵描きさんたち。
 ありがたいことに、発刊一年半でシリーズ五十万部を突破。子どもたちから「名作が、こんなにおもしろいなんて知らなかった!」というハガキをたくさんいただきました。
 わかってほしかったのは、ただそれだけ。
 伝わって、本当に本当に嬉しく思っています。