日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『きみの体の中』 岩田健太郎

(月刊「こどもの本」2016年5月号より)
岩田健太郎さん

「きみの体の中」はどうなってる?

 冬休み明けの保育園で、恒例のもちつき大会。お父さんがおもちをつき、お母さんがまるめる。こどもたちも、それを手伝う。みんなで食べる。腹一杯になったあと、こどもたちにお話ししました。
「からだって知ってる?」と聞くと、みんな目を輝かせて「知ってる〜」と答えます。
「おもちを食べたよね。食べたおもちはどこに行くのかな?」
「おなか〜」「胃〜」
「はい、深呼吸してみましょう。吸った空気はどこに行くのかな?」
「???」
「吸った空気は肺に行きます。ここね(と両胸を指差す)。さあ、ふしぎだね。おもちを食べると、お腹(指差す)に行く。空気を吸うと、胸に(指差す)行く。からだは決してまちがえない。からだって偉いよね」
「うん!」
 人間の体は不思議に満ちています。熱いものに触ると、ぼくらの手はそれを脳で考える前に筋肉を収縮させて手を引っ込めます。こういうことって、当たり前だと思えば、アタリマエです。すごいな〜と思えば、すごいのです。
 医学がとても進歩しました。それはすごい。でも、人間の体にはもともと病気から身を守るたくさんの能力がそなわっています。それもすごい。この、「それもすごい」をこどもたちに感じてほしいと思います。そのために『きみの体の中』のような絵本はとても素晴らしいツールだと思います。
 たくさんのこどもたちが、この絵本をよんでワクワクしてほしいです。ナノカムみたいなかっこいい乗り物(かな?)が出てくるだけで、もう男の子はメロメロです。女の子だってわりと好きです。ミクロなナノカムが人間の体の中を探検するなんて、大人にとってもけっこうエキサイティングです。おじいちゃん、おばあちゃんなら「むかし、『ミクロの決死圏』という映画があってね……」とウンチクを披露できるかもしれません。
 さ、みんなでワクワクしよう。

(いわた・けんたろう)
●既刊に『目からウロコ!外科医のための感染症のみかた、考えかた』など。

『きみの体の中』
保育社
『きみの体の中』
リチャード・ウォーカー・著
岩田健太郎・翻訳
本体3、000円