こどもの本

私がつくった本70
光村教育図書 相馬 徹

(月刊「こどもの本」2016年3月号より)
あかり

あかり
林 木林/文、岡田千晶/絵
2014年11月刊行
光村教育図書 相馬 徹

 昨年度、小社は50周年記念事業のひとつとして、「いのち」をテーマにした5冊の絵本を刊行した。そのうちの1冊である本作は、一人の少女と1本のろうそくの「一生」を描いている。
 原稿の時点で、32ページ16場面の大まかな割り振りはされていたが、人の一生という、絵本としては長い時間をあつかうため、ストーリーをいかに効果的な場面構成にするかがポイントだった。流れを重視し、読者に違和感を与えないことが重要になる。
 そこで制作初期の段階から、装丁を担当するデザイナーに加わってもらい、絵本全体の演出をお願いした。海外の絵本では一般的な、アートディレクターとしての役割だ。
 打ち合わせは、個別ではなく、チームのような形で行った。ラフスケッチを前に、作家、画家、デザイナーといっしょに意見を交わしながら磨き上げていく。途中、迷走することなくまとまって進行できたのは、随所で的確な指示と助言をしてくれたデザイナーによるところが大きい。そうして当初のポイントがクリアになり、本作の骨格は出来上がった。
 彩色された原画があがってくると、いよいよ絵本の全貌が明らかになる。この段階でポイントとなるのは用紙の選定。作品の持つ世界観を充分に表現するためには気の抜けない工程だ。
 数種類の用紙でテスト校をとる。質感にこだわり、上質紙を選択した。コート紙のようにつるつるとした触感ではなく、ページをめくるときに残るかすかな手触り。場面が変わるごとに数年が経過する本作では、その場面ごとの余韻を残したかった。
 また、発色についてもコート紙がくっきりと鮮明に出るのに対し、上質紙は落ち着いてしっとりした風合いになる。ろうそくの火のゆらめきやあたたかさを表現するにも最適だった。
 装いが決まれば、絵本の顔となる表紙のデザイン。1本のろうそくを据えたレイアウト案は、早い段階で固まっていた。そしてタイトルの書体が決定。シンプルだが凛とした存在感をもったものとなった。
 全体を通して意識していたのは、加えることではなく、そぎ落とすこと。文章については、最後の最後までやりとりを重ね、企画から2年半、校了の時を迎えた。それぞれの思いを集約し、ひとつの作品に昇華することができたのは得難い貴重な経験となった。
 刊行から1年余り。ありがたいことに多くの読者から声をいただいている。読後の感動を伝えてくれるものだったり、次の絵本作りにいかしていきたいと思わされるような鋭い指摘であったり。そのひとつひとつが励みになり、この絵本にたずさわることができてよかったと実感する。また同じチームで新たな1冊を、と思う。