日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『しましまかしてください』 林 なつこ

(月刊「こどもの本」2016年3月号より)
林 なつこさん

自分自身に自信を持って

 動物を描くのが好きです。個性的なフォルム、人間にはない仕草、ふさふさした毛並みや独特な色柄。最近では動物園などで彼らをゆっくり観察する時間もなかなかとれなくなってしまいましたが、かわりに動物図鑑を眺めていると、本当に時間のたつのを忘れてしまいます。
 中でも魅力的なのはゾウ。長い鼻、大きな体でいかにも強そうだけど、対照的な小さい瞳。あれ、でもゾウって模様がない。これだけ大きなゾウが、もし派手な色柄だったら楽しいだろうな……そんな空想から生まれたのが、このお話です。
 制作にあたって、はっきりとした、印象的な縞模様のある動物にどんな種類のものがいるのかを調べましたが、これが意外と少ないんですね。でも、少ないけれど実は縞模様もそれぞれに個性があるんです。たとえばワオキツネザルは、尾の毛足が長く、フワフワとした縞。ハチは、つい工事現場のトラ柄のような、ぱっきりとした縞をイメージしがちですが、よーく見ると、一方の端がグラデーションになっている。縞に注目して生き物たちをじっくり観察しなおしてみると、また新たな発見がありました。「しましま」って、やっぱり魅力的です。
 人間界でも、縞模様は根強い人気がありますね。ファッションの定番です。お洒落をして、気分が高揚すれば、自分にも自信が持てる。我が家の娘も、お姫様のドレスを着ると、やおらテンションが上がります。でも、お洒落や変身は、自信を持つためのあくまでひとつのきっかけとして、最後はやっぱりそのままの自分に自信を持ってもらいたいものです。
 というわけで、最初は「しましま」に力を借りたけれど、心の拠り所を得た「ぞう」は結局「しましま」をみんなに返すことにします。
 自然が長い長い時間をかけて作りあげてきたものには、不思議と美が宿っているような気がします。最後は、落ち着くべきところに落ち着くのでしょう。姿かたちも、心の居場所も。

(はやし・なつこ)
●既刊にこどものとも0.1.2.『ぺろぺろりん』、こどものくにチューリップ版『おかしなめんどり』。

『しましまかしてください』
教育画劇
『しましまかしてください』
林 なつこ・作
本体1、300円