こどもの本

私の新刊
『小学生まじょのふしぎなぼうし』 中島和子

(月刊「こどもの本」2016年3月号より)
中島和子さん

魔女にも子どもの時があった

 魔女のお話を書いているので、時々「魔女が好きですか?」と聞かれることがあります。そんな時、私は「うーん…」と言葉に詰まってしまいます。お話に出てくる魔女は、たいてい気難しやで嫌われ者ですし、怪しげな魔法を使います。お話の中だとは言え、魔法を使えば何でもアリ、というのも好きになれません。
 でも、魔女にだって悩みがあるでしょうし、泣きたい夜もあれば、誰かを好きになることもあるでしょう。そして当たり前のことですが、いきなり大人になったわけではありません。子どもの頃の魔女って、どんなだったのかな…と、漠然と思っていました。
 ある時、車で信号待ちしていると、ランドセルを背負った女の子がひとり横断歩道を渡って行きました。一年生だと分かったのは、黄色い帽子をかぶっていたからです。登校時間は、とっくに過ぎていました。少しうつむき加減に歩く女の子の横顔には、強い意志がうかがえました。私は、思わずフロントガラス越しに「がんばれ!」と声をかけていました。どんな事情があって遅刻したのでしょうか。教室に入る時、どんなに勇気がいることでしょう…。女の子の小さな胸に渦巻く葛藤が、私にも伝わってくるようで、しばらく頭から離れませんでした。
 子どもにも葛藤があります。大人になって忘れてしまっていても、子どもだからこその葛藤があるはずです。そのことを書きたい、と思いました。これが「小学生まじょ」が生まれたきっかけです。
 私が書きたい「まじょ」は、元気者だけれどすぐ落ち込む、優しいけれど意地っ張り、怖がりのくせに大胆…。そうなんです。たまたま魔女の家に生まれましたが、どこにでもいそうな女の子です。魔女だったおばあさん、普通のお父さんと結婚して、魔女になることを放棄したお母さんの間に生まれたリリコは、やがて二者択一を迫られることになりそうです。
 魔女? 普通の女の子? どちらを選ぶか、実は私もわからないのです。

(なかじま・かずこ)
●既刊に「小学生まじょ」シリーズ、「まじょねこピピのだいぼうけん」シリーズ、『さいごのまほう』など。

『小学生まじょのふしぎなぼうし』
金の星社
『小学生まじょのふしぎなぼうし』
中島和子・作
秋里信子・絵
本体1、100円