こどもの本

私の新刊
『オニのサラリーマン』 富安陽子

(月刊「こどもの本」2016年2月号より)
富安陽子さん

初夢に赤鬼

 ちょっと古い話で恐縮です。二〇一四年の初夢に赤鬼が出てきました。しかもその鬼、サラリーマンでした。スーツを着て、子鬼たちに見送られ、愛妻弁当を奥さん鬼から手渡され会社に出かけます。バス停に行くと、これまたスーツ姿の鬼がいっぱいいて、そいつらがみぃんな、地獄に出勤していくらしい。「獄卒」、つまり地獄勤めの鬼なのでしょう。もちろん最高責任者(CEO)は閻魔大王。地獄に着くと鬼たちは、一匹ずつ順番に閻魔大王に挨拶して、仕事を割り振られます。さて、赤鬼のその日の仕事は血の池地獄の監視。ところが亡者たちときたら、規則違反ばかりやらかすのです。浮き袋は持ちこむわ、飛びこみはするわ、なんとゴムボートまで! それを、いちいち注意しないといけないのですから、鬼の仕事も楽ではありません。お弁当を食べたらつい、うとうとするのも無理はない。そして、ハッと目を覚ますと、とんでもない出来事が……。とまぁ、見事にオチまでついた完成度の高い夢を見たものですから……しかもそれが初夢でしたので、これを絵本にしなければ神様に―いえ、閻魔大王に申し訳ないと思い立った次第です。〝菜の子ちゃんシリーズ〟でお世話になっている福音館書店の編集担当のかたが「よっしゃ。これ、いきましょう」と乗ってくださり、画家の大島妙子さんが、あっと驚く絵を描いてくださいました。スーツ姿で出勤した鬼がロッカールームで虎皮パンツにはき替える図には思わず膝を打ちました。そうか!あれはユニフォームだったのか!
 絵本というのは通常十数場面で構成されていますが、絵本を作ろうとするとき私は、十数場面で完結する物語を作るわけではありません。絵本を入口に広がる、限りない世界を作り上げようと志すわけです。子どもたちが何度でも遊びに来ることができて、そのたびに新しい冒険や何か面白いことに出会える世界を作りたいと思うのです。大島妙子さんは見事にその思いに応えてくださいました。きっと子どもたちも満足してくれることでしょう。

(とみやす・ようこ)
●既刊に『まゆとおに』『菜の子先生がやってきた!』『菜の子ちゃんと龍の子』など。

『オニのサラリーマン』
福音館書店
『オニのサラリーマン』 
富安陽子・文
大島妙子・絵
本体1、400円