日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『まねきねこがっこう』 きたあいり

(月刊「こどもの本」2016年2月号より)
きたあいりさん

招き猫から教わったこと

 幼い頃、祖母が連れて行ってくれた蕎麦屋さん。そのレジの横に、左手を上げた猫がちょこんと座っていた。
「この猫、なんで手を上げてるの?」
「これはね、招き猫と言って、幸福を招いてくれる猫なんだよ」
 これが、招き猫との最初の出会いだった。その後、大人になり、そんな記憶も薄れる中、たまたま駅前のうどん屋さんが閉店したことを聞いた。
「この店にもし招き猫がいたら、きっと潰れなかったのになぁ……」
 そう思った途端、招き猫の事が妙に気になり出した。調べてみると、愛知県に『招き猫ミュージアム』があると分かり、それこそ文字通り、招き猫達に招かれて、その地を訪れた。
 古くは江戸時代の物など、かなり年季の入った様々な招き猫達が、数千点、所狭しと並んでいた。
「私、招き猫の絵本が描きたいんです」
招き猫達が一斉に私を見た。そして、しばし沈黙の後、「描きたいものを描けばよい」そう言われた気がした。
「ありがとうございます!」
 そして帰宅後、一気に書き上げたのが『まねきねこがっこう』の話である。
 主人公の招き猫・にゃんきちは、仕事を怠けてばかり。ある夜、猫型の紙が飛んで来ると、足が勝手に動き出し、招き猫学校に辿り着く。そこで先生から「一人前にする為に、毎晩特訓だ!」と言われるが、またしてもやる気のないにゃんきち。しかし、「立派な招き猫になれば、次は本物の猫に生まれ変われる」と聞いて……。この先は絵本を読んでのお楽しみである。
 この絵本を制作する過程で、招き猫達から「努力は人を裏切らない」そして「信じる者は救われる」という事を教わった。招き猫に限らず、私自身も、やる気の出ない日があるかもしれない。そんな時こそ、招き猫の事を思い出し、また新たな創作活動に精を出していきたいと思っている。

●既刊に『おみくじ』『おしゃべりメニュー だれがいちばん?』など。

『まねきねこがっこう』
PHP研究所
『まねきねこがっこう』
きたあいり・作・絵
本体1、300円