子どもの頃にどんな本に夢中になっていたかなあ、とぼんやりと考えていたのですが、この本(『こちらマガーク探偵団!』E・W・ヒル/作、蕗沢忠枝/訳、山口太一/画、あかね書房)のタイトルを思い出した瞬間、「これこれ!」と当時のわくわく感が甦ってきました。

 今までずっと忘れていたのに、名前が頭に浮かんだとたん、興奮してしまうなんて、きっと小学生の僕は、あのシリーズがお気に入りだったんだと思います。

 マガークという赤毛の男の子が、友達と探偵団を作るというお話なのですが、人間離れした鼻を持つウィリー、眼鏡をかけて真面目そうな男の子、それから気の強そうな女の子の4人がメンバーだったはずです。彼らがわいわいと言い合ったり、匂いを嗅いだり、野球をしながら、事件を解決する。そういう話でした。

 特に僕が大好きだったのは、彼らが1人ずつ、「IDカード」という身分証明書を持っているところです。自分たちの手作りで、写真を貼ったり、指紋を押したりし、年齢や身長を記してあるカードで、これを読んだ僕が、もういても立ってもいられなくなり、仲のよい友人たちと同じような身分証明書を作ったのは言うまでもありません。

 特別に派手なことが起きるわけがないのに、身近な範囲ながらも冒険をするマガークたちが、羨ましくて仕方がありませんでした。

 僕が書く小説の大半が、日常的な、一般人が巻き込まれる冒険であるのは、この辺が影響しているのかもしれません。

(いさか・こうたろう氏=作家。1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。『オーデュポンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞、『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞。『チルドレン』が第131回直木賞の候補となる。最新作は『グラスホッパー』)


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